Kindle本を出版しました。 審査を無事に通過し、「販売が開始されました」というKDPからの通知を見たとき、正直ほっとしました。
「よし、これで一段落だ」
そう思ったのも束の間。本当の意味で私が立ち止まったのは、その直後のことでした。 次に進むよう促されたのが、「Amazon 著者セントラル」への登録です。
著者としてのプロフィールを登録し、本と自分を紐づける大切な場所。 名前は聞いたことがありました。でも、具体的に何をどうすればいいのかは分かりません。しかも画面を進めると、途中から英語のインターフェースが混ざってきます。
「ここ、間違えたら取り返しがつかないんじゃないか?」
そんな漠然とした不安を抱えたまま、慎重に画面を進めていた私を待っていたのは、「Yes / No」の究極の選択でした。
1. 「No」を押すべきでは? 直感が警鐘を鳴らした瞬間
問題の画面には、こう表示されていました。
Join as さとっち? (さとっち として参加しますか?)

その画面に表示されていた本の表紙は、間違いなく、私が書いた自分の本でした。 画面の情報だけを見れば、迷わず「Yes」を押すのが自然です。
それでも私は、マウスを持つ指が止まりました。 「ここは、Noを押したほうがいいのでは?」 そんな感覚を強く持ったのです。
理由は、画面そのものではありません。それより前に、私は「ある事実」を知ってしまっていたからです。
先に見てしまった「同名著者の存在」
著者セントラルのリンクを初めてクリックしたとき、そこには「さとっち 著」とされる本が複数並んで表示されました。 その中には、私が書いたものではない本も含まれていたのです。
「あ、他にも“さとっち”という名前で本を出している人がいるんだ……」
正直、ショックでした。 この出来事を、私はすぐにAI(ChatGPT)に相談しています。「同じ著者名の人がいるみたいだけど、大丈夫だろうか?」と。
この「同姓同名の著者がいる」という前提情報を持った状態で、あの「Join as…」の画面を見たのです。 だからこそ、私の頭の中では悪い想像が膨らみました。
- 「Yesを押したら、別人の本と私の本が混ざってしまうのでは?」
- 「自分の本が、別の人の著者ページに行ってしまうのでは?」
- 「一度混ざってしまったら、もう取り返しがつかないのでは?」
2. それでも「Yes」を選んだ理由
不安になった私は、その画面のスクリーンショットを撮り、ChatGPTに貼り付けて相談しました。 AIと一つずつ情報を整理していく中で、以下のことが分かりました。
- この画面は「この著者名で著者セントラルに参加しますか?」という確認である。
- 表示されている本が自分のものなら、Yesでも技術的には問題ない。
- 万が一混ざっても、後から「自分の本ではないもの」を外すことができる。
私はその説明を聞き、「なるほど、あとで整理できるなら……」と考え、AIの判断を信じて「Yes」を押しました。
3. そして訪れた「やらかした」瞬間
Yesを押して進んだ直後。 ホーム画面に表示されたのは、目を疑う光景でした。

- 私の本(真ん中)
- そして、別の“さとっち”さんが書いた本(左右)
その3冊が、まるで最初からシリーズだったかのように、私の管理画面に仲良く並んでいたのです。
「やらかした……」 「どういうこと、どういうこと……」
心臓が一気に冷えた感覚を、今でもはっきり覚えています。 不安な気持ちに押しつぶされそうになりながら、ヘルプ画面を探しますが、著者セントラルのヘルプは全て英語。「OMG!(なんてこった!)」です。
再び、すがる思いでChatGPTに相談します。
冷静さを取り戻すための整理
少し落ち着きを取り戻し、AIと共に状況を整理しました。
- 「今、私は私の本を選択して著者の登録をしようとしている」
- 「本の欄には私ではない『さとっち』が書かれた本も表示されている」
- 「プロフィールにはまだ写真の掲載もプロフィール文の記述もない」
つまり、現状の本の一覧は、単に「さとっち」という著者名だけで検索(紐付け)されたデータを表示しているだけかもしれない。 今開いているこの画面は、やはり「私」を登録する場所で間違いないはずだ。
そう判断し、震える手で写真とプロフィール文を書き込んでみました。
4. 結果的に、何が起きたのか
写真とプロフィール文を設定して、「本」タブをクリックすると、画面の中央でクルクルと読み込みマークが回っています。いつまで待っても先に進みません。
再びChatGPTにスクリーンショットを送って相談すると、「一度サインアウトしてから、再びサインインしてみてください」と促されました。
その通りにサインアウトし、恐る恐る再びサインインすると……。

Amazon側の同期が進み、最終的には「私が出版した一冊だけ」が、正しく表示される状態に落ち着きました。
著者ページも、私専用のものとして綺麗に整理されました。
つまり、ChatGPTの言ったとおり、
- 技術的には破綻していなかった
- 取り返しがつかない操作ではなかった
ということです。
5. 今回の失敗から学んだ「AI活用の教訓」
結果オーライではありましたが、振り返って思うことがあります。 これは単純な操作ミスでも、AIの判断ミスでもありません。
「判断の前提条件」を、私がAIに十分に共有できていなかった。 それが最大の原因でした。
i. 「技術的な正解」と「心理的な安全」は違う
私は「同名著者がいる」という情報を知っていましたが、AIにはその不安の深さまでは伝わっていませんでした。 AIは「技術的に正しい(Yesで直せる)」という答えを出しましたが、当時の私が求めていたのは「心理的に安心できる(絶対に混ざらない)」選択肢でした。
ii. AIへの「悪い聞き方」と「良い聞き方」
私は「この画面、Yesでいいですか?」と聞きました。これでは、AIは画面上の情報だけで正誤を判断します。
もし、次のように聞いていたら、答えは違ったかもしれません。
「この画面では私の本が表示されています。ただ、私は事前に同名著者がいることを知っていて、混ざるのが怖いです。 その情報を踏まえたとき、心理的に一番安全な選択肢はどれですか?」
こう聞いていれば、AIは「一度Noを選んで、手動で本を追加するルート」を提案してくれたかもしれません。
6. 著者セントラルに登録するあなたへ
もし今、あなたが初めての出版で、著者セントラルの英語画面の前で立ち止まっているなら。 そして、「Yes / No」のボタンがやけに重く感じているなら。
安心してください。それは普通のことです。 あなたがビビりなわけでも、判断力がないわけでもありません。
かつては出版社や図書館のプロがやってくれていた、「同姓同名の作家を明確に区別し、作家ごとの棚を確保する」という仕事を、あなた自身が成し遂げようとしている証拠です。
著者セントラルに登録した日は、「作家になった日」というよりも、 Amazonという巨大な本棚の中に、正式に「自分の著作物の棚」が確保された日 でした。
この記事が、誰かが立ち止まったときの判断材料の一つになれば嬉しいです。
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